会長挨拶

会長挨拶

第33-34期(2022-23年度)

学会の未来に願いを託して

佐藤 千津(国際基督教大学)

 ようやく新型コロナウィルスの感染状況が落ち着き、学会も通常の運営体制に戻りつつあります。今年の研究大会は35回、紀要は30号を数え、また一つの節目を迎えます。充実した学会活動を続けることができるのは会員の皆様のご理解とご協力のお蔭と存じます。心よりお礼を申し上げます。
 昨年9月には赤尾勝己理事を大会実行委員長とし、第34回研究大会を初めて大阪で開催いたしました。美しい秋晴れの下、関西大学千里山キャンパスに集い、4年振りの対面開催にかつての活気が戻りました。会場で再会を喜び合い、互いの近況や研究について語り合う参加者の姿が印象に残っています。
 また、11月にNational University of Samoaにて開催されたOceania Comparative and International Education Society(OCIES)の第51回大会において、Zane Diamond副会長らがアジア大洋州地域の複数の比較・国際教育学会と共同で“Establishing new relationships, understandings between CIE societies in Asia and Oceania”と題するラウンドテーブルを企画しました。この共同研究が進展すれば同企画のシリーズ化を考えています。
 今年の活動としては、3月に楊武勲理事を中心に国際研究交流会をオンラインで開催し、講師として台湾から国立曁南国際大学のDr. Biung Ismahasanをお迎えします。ブヌン族出身のDr. Ismahasanは現代アートのキュレーターやアーティストとしても活躍されており、台湾先住民族の教育と文化についてポストコロニアルな視点から考えます。 
 10月には、小川佳万理事を大会実行委員長とし、第35回研究大会を広島大学で開催いたします。広島大学での開催は2001年10月の第12回研究大会以来、2回目となります。今大会の実行委員会は、広島に加え、岡山や山口の大学に所属する会員で構成されており、会員層の広がりが感じられます。公開シンポジウムでは多文化保育、課題研究ではSDGsなどに関する興味深い企画が検討されていますので、どうぞご参加ください。
 ところで、本学会紀要『国際教育』はこれまで学事出版より発行してきました。第18号から市販化し、学会の研究成果をより広く多様な読者に届けられるようになりました。諸般の事情により、第30号からは明石書店に依頼することになりました。紀要『国際教育』が創刊されたのは1992年11月のことです。創刊に際して松崎巖初代会長は、国際情勢の変化から生じる教育課題が多岐にわたる中、その解決に国際教育分野の研究と教育がいかに貢献できるかという問題を提起されました。30年後の今日、世界の情勢はますます複雑化しています。持続可能な社会の未来へ向け、様々な課題をともに研究する場として本学会が存在し、その成果発表の場として紀要がますます充実することを期待します。記念すべき第30号への積極的な論文投稿をお願いいたします。
 今もなお社会の平和と安定を脅かす動きが絶えず、心落ち着かない日々が続いています。一刻も早く世界中のあらゆる人々に平和と安らぎが訪れることを切に祈ります。また、これからの1年が会員の皆様にとって未来へと続く幸多き日々となり、学会にとっては更なる飛躍の年となることを願います。

(2024年2月)

第33-34期(2022-23年度)

学会の未来に向けて

佐藤 千津(国際基督教大学)

 昨夏の役員改選により第33-34期会長を拝命いたしました。身に余る光栄に存じますが、4期目となり責任の重さを改めて感じております。本学会は1990年8月8日に創立され、今年で33年目となります。先達諸氏が築かれた伝統を継承するとともに、学会の更なる発展のために引き続き全力で取り組む所存です。会員の皆様のご協力とご支援を心よりお願い申し上げます。
 昨年のNewsletterでも触れましたが、学会創立当時、東京大学教育学部の教授であった松崎巖初代会長は、教育をめぐる様々な課題について考える際にはその基礎に「人類愛に根ざした哲学」がなければならないと学会設立趣意書で述べられました。さらに、教育研究においては自己と他者の双方の幸福に配慮し、世界中の人々の将来について考える視野の広さが大切だと説いておられます。あれから30年余りが過ぎましたが、今もなお世界の平和と安定を脅かす動きは絶えず、加えて未知のウィルスの流行など、心落ち着かない日々が続いております。今まさに人類が直面する数多の難問に向き合うために「人類愛に根ざした哲学」をもとに研究を進め、手を携えて明るい未来を思い描くべき時ではないでしょうか。学会がそのための場であり続けることを願います。
 こうした思いを共有しつつ、第33-34期の学会運営体制がスタートしました。理事の定数は会員数に基づいて決められますが、今期は会員数の増加により理事定数が19名と過去最多となりました。外国籍の理事も増え、初めて海外在住の理事が副会長に就任しております。本学会の理事会ではコロナ禍以前からオンライン会議を併用しておりましたが、それが一般化したことで各種委員会にも国内外の会員に参加していただけるようになりました。このように以前にも増して国際性と多様性、そして活力に満ちた陣容を整えることができ、それぞれ活動を始めております。
 まず、3月にはJeffry Gayman理事を中心に国際研究交流会をオンラインで開催いたします。西オーストラリア州教育省のMs. Patricia Konigsbergを講師に迎え、“Two-way Learning”による教師教育について考えます。私たちが互いの違いについて学び、違いから生じる様々な問題を乗り越え、リスペクトフルな人間関係を築くことは容易いようで難しく、些些たるようで重要な課題です。こうした大きなテーマを日常生活の中でいかに具体化するかについてオーストラリアの取り組みを手がかりに考えてみます。
 次に、秋には赤尾勝己理事を大会実行委員長とし、第34回研究大会を関西大学で開催いたします。関西大学の沿革によれば、フランスの法学者であるボアソナードの教えを受けた司法官や自由民権運動家によって1886年に設立された関西法律学校が大学の前身です。今や四つのキャンパスに13学部を設置する大規模総合大学ですが、今大会は緑豊かで広大な千里山キャンパスで開催されます。大阪での大会開催は初めてのことです。今年こそは爽やかな秋に大阪で再会し、実りのある研究活動ができれば幸いです。
 これからの一年が会員の皆様にとって幸多き平和な日々となり、学会にとっては40周年に向けた飛躍の年となることを願っております。

(2023年2月)