会長挨拶
第25-26期(2014-15年度)
日本国際教育学会第25回大会を終えて
―創立25周年の節目に―
岩﨑 正吾(早稲田大学)
日本国際教育学会は2014年に創立25年という記念すべき節目を迎えました。1990年8月に設立されて以来、四半世紀もの間、グローバル化の進展に伴う国際情勢の変化や新公共管理政策(成果主義)による大学改革の嵐が吹き荒ぶ直中にあって、困難を乗り越え、国際教育研究に果敢に取り組み、人間社会と切り結ぶ教育研究を多面的に深化させてこられた会員の皆様に敬意を表すると共に喜びを分かち合いたいと存じます。
この記念すべき時に当たって、先の2014年9月13日(土)と14日(日)に、宇都宮大学で開催された第25回大会が大きな成功を収めましたことは何よりも増して重要な出来事であったと思念するところです。開催に当たり大変ご尽力頂きました廣瀬隆人大会実行委員長、若園雄志郎大会事務局長及び実行委員の方々をはじめとした関係者の皆様に心より御礼申し上げます。また、まだ真夏の余韻冷めやらぬ宇都宮大学の峰キャンパスに全国各地からご参加下さいました会員各位に対しまして深く感謝申し上げます。
今大会では、「先住民族の文化復興と教育」というテーマで公開シンポジウムが開催されました。文化人類学(渥美一弥・自治医科大学教授)や開発教育(湯本浩之・宇都宮大学教授)の専門家によって先住民族問題に照明が当てられ、日本におけるアイヌの言語・文化復興の可能性について真摯な議論が展開されました。また、課題研究では、第23回大会及び第24回大会からの継続研究である「先住民族の教育権保障に関する国際比較研究」の第3回目として、メキシコと台湾における権利獲得運動の到達点と課題が取り上げられ、斉藤泰雄会員の司会の下、山崎直也、米村明夫、楊武勲の各会員による研究発表が行われました。自由研究も4つの分科会を通して19本の発表があり、日本国際教育学会の歩みに大きな足跡を残しました。
私も先住民族の教育権保障という研究に携わっているのですが、教育権保障にとって言語もしくは言葉への権利の問題はきわめて重要であると考えています。というのも、文化の伝達が教育であるならば、教育は伝達手段としての何らかの言語を必要とするだけでなく、言語は文化そのものであり、言語の習得自体が文化の継承(伝達)、即ち、教育そのものだからです。ここには、教育と言語との切っても切れない関係、教育と言語における目的―手段の相互転換関係があります。つまり、言語を手段として教育(目的)が達成され、教育を手段として言語(目的)は習得されるという関係です。このような意味で、言語は二重の意味で人間を形成します。手段(道具)として人間の形成に奉仕し、目的(文化の伝達)として人間を形成するのです。言語と教育権保障との関係を言語的人権という視座から研究することの重要性は強調してもし過ぎることはないと思います。
私はこの度第二期目の会長を仰せつかり、責任の重大さを痛感しています。この間、理事や役員のあり方、選挙規程や大会の開催方法の見直しなど、学会改革に取り組んで参りましたが、先輩諸氏の思いを受け継ぎ、日本国際教育学会をいっそう発展させるべく、もっと努力しなければならないと気を引き締めているところです。第一期目と同様に第二期目におきましても、会員の皆様のいっそうのお力添えを頂きますようお願い申し上げる次第です。